知的に障がいがある方のなかには「表現すること」が好きな人が多いにもかかわらず、それらを発表する機会は少ない。特別支援学校を卒業した方にとって表現の場を探すことは至難の業と言って良いと思う。 知的障がい者の方々を支援する生活支援員として二十数年間働いた経験を通して知った、障がいがある方々の特性や特徴、そして不足している社会資源。ご本人たちが望む「自分がやりたいこと」の実現を、自分が学生時代から親しんできた「演劇」というツールを通して提供できたらという思いから、現役時代の職場の仲間4人に協力を仰いで、知的障がい者の演劇活動を支援するNPO法人を立ち上げることができた。 定年後にこの活動に携わって、私の中に内在する自己実現の欲求を再び見直すことにもなり、長年勤しみ励んできたことで今の社会に欠けている部分を補う手助けができるのは、ありがたく幸せなことと思っている。